
この時期になると、
理由ははっきりしないのに、なぜか焦ってしまうことがあります。
「今のままじゃダメな気がする」
「早く何とかしなきゃいけない気がする」
「置いていかれる気がする」
明日までに答えを出さなきゃいけないような、
今すぐ動かないと取り返しがつかないような、
そんな感覚になることって、人間なら誰にでもあります。
お金のことかもしれないし、
人間関係のことかもしれないし、
居場所や将来のことかもしれない。
理由は人それぞれでも、
「急がなきゃ」という感覚そのものは、とても人間的な反応なんだと思います。

ただ、焦っているときの人間って、
だいたい同じことをしてしまいます。
本当は早歩きで十分なのに、
いきなり全力疾走をしようとする。
少しずつ進めばいい道なのに、
「近道があるはずだ」と思って、
急な坂道に入り込んでしまう。
走れば、一時的に進んだ気はします。
近道に見える道も、確かにあります。
でも、全力疾走は長く続かないし、
急勾配の坂は、途中で“壁”になります。
息が切れて、
足が止まって、
「やっぱり自分はダメなんだ」と感じてしまう。
でもそれって、能力の問題じゃなくて、
ペースの問題なんですよね。

精神科医のヴィクトール・フランクルは、
こんな言葉を残しています。
「人は変えられない状況の中でも、
それにどう向き合うかを選ぶことができる。」
今の状況を、無理に変えなくてもいい。
今の自分を、無理に押し上げなくてもいい。
走るか、歩くか。
近道に入るか、遠回りを続けるか。
人間には、できる範囲があります。
体はひとつしかないし、
使えるエネルギーにも限りがあります。
だから、
無理なスピードを選べば止まってしまうし、
急な坂を選べば、前に進めなくなる。
それは失敗ではなく、
人間として自然な結果なんだと思います。
5年かけてもいいし、
10年かけてもいい。
途中で目標が変わってもいいし、
それは悪いことじゃない。
むしろ、今の自分に合った道を選び直しているだけかもしれません。

焦っているときほど、
「もっと頑張らなきゃ」
「急がなきゃ」
と思ってしまいます。
でも本当は、
全力疾走をやめて、
早歩きに戻すことのほうが、
ずっと遠くまで行けたりします。
近道を探すより、
今の道を、今の歩幅で進む。
それが結果的に、
自分の人生を諦めずに続ける方法なんじゃないかなと、
私は思っています。
立ち止まる日があってもいい。
歩幅が小さい日があってもいい。
焦ってしまう自分を見て思うんです、
――まぁ、そんなもんか。って
訪問看護ステーションアイビー燕 管理者 高田
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